9News: Falling Faster
とうとう始まりました。
オーストラリアの住宅価格の下落が止まりません。

20年間以上続いたオーストラリアの高景気もとうとう年貢の納め時の様です。
原因はいろいろありますが、まあ自分たちで作った住宅バブルが弾ける時が来たようです。
第一、急激な地価の上昇が経済に良い効果をもたらす訳がありません。

んなのは、1989年の日本のバブル崩壊を思い出せばわかる話です。
資本主義の歯車は緩やかで継続的なプラス成長以外の方法では、負しか生み出しません。
ってワケでイケイケだったオーストラリア経済もとうとう代償を支払うときが来たようです。
■オーストラリアの景気後退の兆候
つい最近、オーストラリアで最も高価な住宅街であるシドニーとメルボルンの地下が大きく反転し下落を始めました。
シドニー

メルボルン

これは、つまり大きな利益を見込んで高価なアパートに投資をしようという人が突然考えを変えたことを意味します。
要は金持ち投資家たちが、これ以上は都心の地価は上がらないと踏んでいるって事です。
'Worrying signs' are showing in Australia's housing market: Strategist | The Rundown
そこにオーストラリアの3代銀行が今まで住宅ローンなど一般人に資金を貸す時に審査をかなり甘くして、実際には背負えない額の資金を住宅ローン希望者に貸し出していたという大問題が発覚します。
これは、現在自宅及び投資として住宅ローンを抱える債務者の多くが、金利が上昇した際にローンの返済を継続できず、破産する可能性が必要以上に大きいことを意味しています。
そして更に大問題なのが、オーストラリアの住宅ローンの40%がインタレストオンリーローンという形態のリボ払いのような落とし穴のあるローンで契約されていることです。

■インタレストオンリーローンとは
注意:分かりやすくする為に円ドルのレートを$1=100円で解説しています。
一般的に住宅を購入する際には、自己資金で足りない分を銀行などからの融資で補います。
例えば50万ドル(5000万円)の家が欲しかったら、まず元金を最低20%を作ります。
元金の20%=10万ドル(1000万円)を用意すれば、銀行は残りの40万ドルを貸してくれます。
40万ドルに毎年例えば、年3.95%=週304ドルの利子が付くわけですが、最初の5年はそれだけ払えばおkというローン、これがインタレストオンリーローンです。
って事は、銀行から4000万円も借りてるのに、週たったの300ドルちょいの返済で5000万円の家に住めるって事です。
■インタレストオンリーローンの利点
どうですか?
今時の物価の高いオーストラリアの街中で、週300ドルで部屋や家を借りようとしても広くてまともなユニットは、なかなか見つかりません。
だからって、家賃を週450ドルとか払って、他人の家のローンの返済の手助けをするぐらいなら、元金絞りだして、今の家賃より安くて今の家よりも豪華な家に住もうって話です。
でも、インタレストオンリーローン問題は5年後、利子のみの支払い期間が終わり一切減っていない元金と利子の支払いが始まります。
はっ?
なんで、そんな意味のない支払いを最初の5年間するのかというと、その5年のうちに5000万円で買った家が物価の上昇と共に6000万円まで値上がりして、その時に売り抜いちゃえば1000万円の得になるってワケだからです。
今まで支払った利子は、家賃だと思えば安く済んでるので万々歳なワケです。
えっ?
そんな夢みたいなことが、実際に過去20年間急激な地価の高騰と共にオーストラリア全土、特にシドニーメルボルンで起きていました。
しかし、
しかしっ!!
■20年以上続いたオーストラリアの好景気に陰り
リーマンショックでも耐えたオーストラリアの景気ですが、ここ最近の同国の輸出先の40%を占める中国経済の鈍化やトランプの暴れっぷり、そしてユーロやトルコ、アルゼンチンなど世界経済への不安材料がとうとうオーストラリアの不動産投資家のチャックを締めだし、大都市中心部の地価が継続的な下落に転じ出した模様です。
Property is a risky thing': Stagnant property prices the new normal
金利が安く、経済が上向きの時は多少のリスクをしょってでも儲けよう、投資しようという人が大勢います。
オーストラリアは、ちょっと前までそういう国でした。

なので、同国の中流層以上がマイホーム購入という投資はじめ、元々5年後に元金と合わせて利子を払う経済能力が無い人でも銀行から簡単にお金を借りまくってしまいました。
そして現在、輸出や世界経済の後退と共にオーストラリアの住宅価値が一気に下落を始めました。
■靴磨きの少年の話
なぜ今なのか?
オーストラリア・リザーブバンク利上げにより、資金の余裕と購買意欲のある投資家が底をついた様です。
現在、俺はオーストラリアでかなりの経済的底辺にルンルンで居ますが、つい最近同じレベルの知り合い二組が、
『これから更に家の価格が上がったら買えない』
という理由でホントに家を買いました。
要は貧乏人までマイホーム投資ってワケです。
そりゃ、投資家層がそこを突くわけです。
■資金をむしり取られる後追い投資家
仕組みは、この前のビットコインブームと同じです。
先ず、一般人の知らないウチに安値で金持ちが買い占める。
↓
金持ちと繋がりのあるメディア関係者が買いだす。
↓
資金のある芸能人がコソコソと投資する。
↓
その後、一斉にメディアを使いビットコインの儲け話を連日放送し、一般人に後追いさせ高騰させる。
そして、その下の投資家層がいなくなったマーケットは、小さな不安要素で値を付ける人が居なくなり、当たり前のように大暴落。
もちろんメディア関係者は一般人が買い出し値段が高騰した際に綺麗に売り抜いているので大儲けし、メディアに釣られた最後の投資層がぶっ飛ぶような損をする。
要は、それでコソコソ儲けたお笑い芸人が暴落した後にテレビでニヤニヤしながら言っていた『靴磨きの少年の話』と基本的には一緒の仕組みです。
■豪中央銀行による利上げで投資熱が冷める
あ~んど、オーストラリアのリザーブバンクによる金利の上昇と、大手3大銀行のテキトー過ぎる金貸しが政府にバレて、貸出しルールが厳しくなり、今から同じように『金無いけど投資の為に家を買おう』という人を市場に入れない様にしてしまいました。
■今後3年間に跳ね上がった返済に苦しむ債務者が大幅に増える
Could you afford your mortgage if interest rates rise in Australia?
そして大問題は、オーストラリア全体で320万人いる住宅ローン債務者の内、今年2018年から2021年までの3年間に約100万人の債務、$380,000,000,000(1円=1ドル計算で38兆円)分のローンが5年目を迎え、利子のみの支払いから元金と利子の返済が始まります。
そうすると彼らのローンの返済額は一気に30~40%増え、例えば、週300ドルの支払いが400ドルになります。
その前に元値以上で家を売ってしまえば、結果オーライ±ゼロだった筈ですが、現在既に家の値段が絶賛下落中です。
そうです。
例えば、4000万で買った家が5パーセント下落すると、売っても3800万にしかならず、200万円の損失です。
そうです。
家を追い出された挙句に自分の財布から200万円を出さなければ銀行に借りた3000万円を返せないってワケです。
こりゃ、最初の“投資”の話と大分違ってきます。
それなら、いっその事その家をホールドして、自分のマイホームとして支払いを続ければ良いワケですが、そんなことをしている間にその家の価値が10%、15%とどんどん下がってしまえば、例えば将来的に2500万の価値にしかならない家に元金1000万と借金3000万+その利子を25年とかかけて支払う事になる訳です。
でもまあ、これはまだまだラッキーなパターンです。
■甘すぎた大手銀行の住宅ローン、今では時限爆弾と化す
更なる問題は、上記で述べた通りオーストラリアの3大銀行が過去の地価バブルに乗ろうと駆け込んできた一般投人資家達と自分達の利益を合致させるため、不正確なローンの申請書を作り上げ、明らかに限度額を超えるローンを一般投資家に組ませていたという案件が全体の約30%に及んでいるとの事です。
本来銀行は、住宅ローン申請者に20%の元金を求め、収入も支払いに見合っているか確認します。
これは、多少の金利の上昇などで支払いが出来なくなる債務者が発生しないようにする為に銀行にとっても大切な確認作業です。
しかしそれは、いつの間にか“ただの基本”になり、貯金1000万ぐらいで世帯収入が1200万円にも満たない夫婦が9000万の家を投資の為に購入したいと言ってきたら、銀行もどうにかこうにかローンを組んでしまっていたようです。
Significant Australian House Prices Downturn - Prediction by UBS Chief Economist
この場合の最初の5年間は週にたったの600ドルちょいの支払いで済みますが、現在こーいう価格帯の家も絶賛値下がり中で、その後の30%値上がりした返済額の$800を今後、他人に貸し出しても生み出せないネガティブ資産になりつつあります。
■選択を迫られる大勢の過剰債務者
では自分が代わりに支払い続けるのか?
いやいや、世帯収入が12万ドルしかない夫婦が子供もいるのに、1年に家賃的利子の支払いで4万ドルも持っていかれていいのでしょうか?
引っ越せば、家賃2万ドルぐらいで十分生活出来るので、例えばこの家族の場合、5%値下がりしたところで売ったら、45000ドル(450万円)の支払い or 借金を背負って投資物件を出て行き、人生-450万円からやり直しって話になります。
そして、これもまだまだ立ち直れるパティーンです。
■無理をした投資家は不動産バブルが弾けたら、返す当てのない債務者
大問題なのは小金持ち系オーストラリア人の皆さん、楽して儲けようとこんな物件を一人で2軒も3軒も抱えている“自称投資家”さん達が山ほどいます。
このお姉ちゃんなんて24歳で、家10件の投資で銀行から8億を超える融資を受けていました。
Home Groans | 60 Minutes
お陰様で世界最大まで膨れ上がったオーストラリアの住宅ローンのなんと約40%がインタレストオンリーローンという、買った家の価値が上がった時に売り抜いちゃうつもりで無理なローンを組んだ人たちで構成されています。
そこにリザーブバンク(豪中央銀行)から金利上昇のお知らせです。
世界経済どこの国も、いつの時代も一緒ですが投資が熱くなると金利を上げて熱を下げようとします。
そうしなければインフレは止まらず沸騰してしまうからです。
金利が上がると銀行から資金を借りれる人が減るのでその分自称投資家の数が減ります。
9News: House Prices have finally started falling
そうすると、今まで投資してきた人たちから更に高く家を買おうという人が減ります。
買ってくれる人が減れば供給側が増えて必然と価格競争が始まり値段が下落します。
そして値段が下がりだすと、値上がりを期待して家を買った人達の多くが大きな負債を抱える前に痛みを最小限に済まそうと家を売りに出し、さらに価格が下がります。
はい、そして思い出しましょう。
■更なる値上がり以外では損をする投資型住宅ローン者が全体の40%
儲かると思って今まで利子しか払っていない人達が、家のローンを組んだ人の40%を占めています。
これは、オーストラリアの住宅ローンの10兆円分の住宅ローンが投資の意味をなさなくなり、今後焦げ付く可能性を意味しています。
9News: Rate Rise
■金利上昇で普通の住宅ローンを返済中の債務者にも打撃
そして、そこに豪中央銀行が0.14%の利上げを発表し、銀行からインタレストオンリーローンとは違う、最初から普通に元金と利子の支払いをしている一般的な住宅ローンの債務者も今後、週30~50ドル前後、支払いが増える事になるます。

https://www.theaustralian.com.au/news/nation/suncorp-follows-westpac-rates-lead/news-story/4a212235e8296d35c32c07c0030ef07b
これは、すでにギリギリでやっている家庭に対し、家の売却を考えさせるほどのモーゲージストレスになります。
まあ、月の支払いが2万円増えればアルバイトでもすればいいワケですが、はい思い出してください。
その家、とっとと売らないと更に値下がりしそうです。
っとまあ、こんな感じで現在、都市部を中心に家の値段が急激に下がっておりマーケットには売り家が溢れ出しています。
■このまま12ヵ月で40%の値下がりをする可能性
Bricks and slaughter: Part one - Exposing Australia's housing crisis | 60 Minutes Australia
そうです。
今後、オーストラリアでまんま日本のバブル崩壊と同じような地価の下落がやって来るかも知れません。
そうすれば、投資する金の無い俺の方が借金を背負った元投資家より金持ちという事になります。
いやホント、怖い話です。
っというワケで、現在2018年9月のオーストラリアの不動産事情を解りやすく解説しようとしたら、逆に凄んげえ長文になっちゃったよって話でした。

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